民間救命士統括体制認定機構
代表理事挨拶
民間救命士統括体制認定機構
代表理事 有賀 徹
消防機関による救急車搬送件数は2016年1年間で約625万件までに達しました。救急車の需要過多は病院までの搬送時間の延伸を社会問題化となってきています。高齢者人口増加と正比例していることが指摘されていることから、来る2025年には、救急医療体制の維持すら困難になることも十分考えられます。
この救急搬送の増加対策として、消防機関以外の救急救命士活用が検討されるようになり、平成27年度救急業務のあり方に関する検討会では、消防機関に属しない救急救命士が、救急隊引き継ぐまでの処置等を担う仕組みが検討され、1.地域包括ケアシステムでの活用2.大規模集客施設、大規模イベント等での活用3.役場救急での活用とMC体制の整備の必要性が報告されています。さらに、上記などに加え、医療機関においてのドクターカー同乗員や警備会社など様々な現場で活用が社会から期待されています。
そこで、救急医療体制が健全に維持され、救急初動体制、地域包括医療の枠組みの中で救急救命士の社会的利活用を図ることを検討するために日本医師会、日本救急医学会、日本臨床救急医学会などを含む救急医療関連団体で2016年8月に救急救命士の社会的利活用協議会を立ち上げ、地域包括医療の枠組みの中で、救急救命士の社会的利活用を熱心に検討してまいりまました。この協議会では3月に答申書として社会に提示するに至りました。
今後は消防に属さない救急救命士の再教育・認定、地域MC協議会との密接な連携の構築、救急救命士の所属する施設あるいは実施する機関の認定、また指示・事後検証に当たる統括医師の認定等、具体的要件などを検討しなければなりません。この解決手段として協議会を基本骨格として一般社団法人「病院前救護統括体制認定機構」を2017年5月1日に設立登記するにいたりました。たとえ民間でも救急救命士の活用には、指示医師による指示と活動プロトコルの策定,事後検証など,消防機関と同様にメディカルコントロール体制構築は必要であるからです。
現在、救急救命士の有資格者は約6万人を超え、このうち約4万人は消防機関において救急救命士として勤務していますが、残り2万5千人のうち約1万5千人は救急救命士の資格を有しながら医療関係職種に全く関わっておらず、また、定年を含めて消防退職後の救急救命士資格者は年々増加しています。救急救命士という病院前救護専門職としての医療国家資格者の知識、技術の社会的利活用は、国民の安心安全を下支えするものであり、ことさら救急医療が開始される前の救急初動時には欠かせない存在であること認識されているものと考えます。
その一方で、医療統括体制の不備や生涯教育等の継続教育を受ける機会が与えられておらず、医療者としての質の担保は個人に任されている状況にあり、社会的な活動を行うためには、多くの課題を抱えています。また本機構では救急救命士のみならず、豊富な臨床経験やMC経験を有する医師の方々にもご活躍いただければと考えております。
このような社会的背景から、消防外で救急救命士の雇用関係等がある救急医療関連団体で救急救命士の社会的利活用における検討を行う必要があると考え、本機構を設立いたしました。今後の活動にご支援とご理解いただければ幸いに存じます。